文花の生前日記



私は空想をするのが好きだった

私の好きなお話
私の好きなキャラクター
私の好きな世界

様々な扉を作って開けて
この世界には無いものを想像して来た

けれど 一つだけ
知らないけれど
知りたいと思う事が一つだけ

人は死んだら どうなるのか

私のこの身体は この思想は
どの様に終わって 何処へ向かうのか

想像では辿り着けない結末が
ただ知りたかった

私の知っている範囲では
この世界の人達は 人が死を迎えた時

よく分からない場所に連れて行かれて
よく分からないけれど燃やされて
よく分からない墓石の中に収められる
らしい

誰から聞いたかすら忘れたけれど
何てつまらない最期なんだ と
幼い頃の私は思った

誰もがそんな最期を迎えたんじゃあ
どんなに頑張って生きてきた身体も 心も

最終的にはそんなものになって
人知れず変わり果てていくんだ と
密かに人として生まれた事を後悔した

せめて 死しても空想だけは残せたのなら…
どんなに良い事だろう
死して空想の中に存在出来たのなら…
どんなに素敵な事だろう

だから 手始めに私は考えた

私が死んでも 傍に居てくれる存在を
空想と私を繋ぎ止めてくれる存在を



出来た

私が死んでも 私と共に歩んでくれる存在
私と私の空想を結んでくれる存在

オリジナリティにはあまり自信が無い
なんてったって
私の友達を借りてきた様なものだから…
だから 見た目も性格も友達の皆そっくり

きっと友達がこの存在を知ったら
自分のパクリだって言われちゃうかな

けど 良いの

死んだ私の隣に居てくれるこの子が
私の友達の様に
私の家族以上に接してくれるなら

私には兄弟∥姉妹という人がいない
生まれた時から学校に通うまで
ずっと祖母の家で一人きりだった

小さい頃 お砂遊びもお飯事も経験せず
私の心を埋めてくれるのは空想だけだった

心……
それは 私自身であり 私の空想……

良い名前になるかもしれない
男の子の名前じゃないだろうし
だとしたら妹かな

どうせ死ぬのなら 死んだ先くらい
家族が出来ても問題無いよね

そう考えると 死ぬのも悪くない気がした
だって 死んだ方が寂しくないもん

このまま生きてたって
きっとお父さんとお母さんは帰って来ない

死んだら心ちゃんが傍に居てくれる
それに 人はいつかは死ぬんだから

私の友達だって
いつまでも傍に居てくれる訳じゃない
いつかは私を置いて遠くに行っちゃうんだ

この子に会えるかすら分からないけれど
生きてる間くらい
そんな空想を信じていても良いよね



意味が分からない

どうして私の生き死になんかで
そんなに声を荒らげるの

人の事考えもしないで?
それはこっちの台詞だよ

最近の流行だか何だか知らないけれど
興味の無い世間話を短機関銃の様に

けど 私はずっと我慢して聞いてた
聞きたくないなんて一言も言わなかった

人の事考えもせず なのは貴方もだよ
けど そう口答えはしなかった

言っても言わなくても
私にとってはどうでもいい事だから
ましてや私の生き死になんて

あぁ 今 私が死んだら
この人は どんな思いをしながら
私の亡骸と お別れをするんだろう

そんな 悪魔の囁きの様な
興味が 好奇心が
頭の中を 巡って 逝く

あの子なら
私のどんな妄想で出来た作り話でも
嫌な顔せず付き合ってくれるのに

どうして 貴方はいつも 私と違うのだろう


Hello…

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